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【奈良】不審ヶ辻子町は不審な場所なのか?(その1)

ひょんなことから、奈良市に「不審ヶ辻子町」という珍しい地名があることを知った。読み方は「ふしがづしちょう」。ふと気になってAIに聞いてみると、なんと地名に「不審」が付くのは全国でここ1カ所だけだという。江戸時代に名付けられたらしいが、その由来には「鬼の伝説」が関係していることも分かった。

果たして、不審ヶ辻子町は本当に不審な場所なのか?
自分の目で確かめるべく、現地へ足を運んでみた。

狭い路地の風景、左側にはモダンな建物、右側には伝統的な店舗の青と白のストライプの幕があります。

おどろおどろしい名前に反して、そこは街の中心部だった
「不審が付く地名」と聞けば、人里離れた町外れや薄暗い山奥を想像しがちだが、実際の場所は全く違った。思いきり奈良市の市街地なのである。

町の東側は「関西の迎賓館」とも呼ばれた優雅な奈良ホテルの敷地に接しており、西側は旧奈良市役所のすぐそば。かつて市役所があった周辺というだけあって、当然のように飲食店や和菓子店などが軒を連ねている。斜め向かいにある「ホテル尾花」も、かつては市内最大級の映画館だった場所だ。活気に満ちた、実に平和なエリアである。

駐車場とその周辺にある建物を示す風景。背景には緑豊かな木々と伝統的な建築物が見える。

「辻子(づし)」とは何か? 路地との違い
不審ヶ辻子町の面積は約6600平方メートル。サッカーコート(約7000平方メートル)の94%ほどの広さになる。

名前に含まれる「辻子」とは、細い道のこと。奈良や京都を中心に、辻子が付く地名はいくつか存在する。現代の私たちは細い道をひと括りに「路地」と呼んでしまいがちだが、辻子は中世の町割りの結果として生まれた歴史ある通り抜け道だ。「路地と一緒にするな」という、こだわりを持つ声もあるようだ。

しかし、この不審ヶ辻子町の真ん中を通る「辻子」は、東側が高畑町、西側が鶴福院町に挟まれており、実際の長さはわずか数十メートルと驚くほど短い。

地元の方に聞いてみた
実際のところ、この町に住む人は「不審」という町名をどう感じているのだろうか。
不審ヶ辻子町でご実家をギャラリー&ポストカードのお店「藤影堂」にされているオーナー、桂美奈子さんにお話を伺ってみた。

伝統的な日本家屋の外観、黒い木材と白い壁のコントラストが印象的。入り口には「ギャラリー」の看板が見える。

ーー不審ヶ辻子は『ふしんがづし』ではなく『ふしがづしちょう』と読むんですか?
「私は普通に『ふしんがづし』と言っていますよ」

ーー町名に『不審』が付いていたことで、子どものころにからかわれたり、いじめられたりしたことはありませんでしたか?
「全くありませんでした。すぐにお菓子屋さん(とらや)があって、市役所も映画館も飲食店もあって、人が多い所でしたから」

鬼伝説の謎へ
地元の方にとっても、不審な出来事など何もない、愛着のある普通の町だった。

では、そもそもなぜ、町名にわざわざ「不審」などという文字を入れたのだろうか。
冒頭でも少し触れたが、どうやら「小坊主が悪い鬼を追って来たが、この辻子で見失ったから」というのが命名の理由らしい。

だが、実際に現地を歩いた私は、ある大きな疑問を抱かずにはいられなかった。
果たして、こんな「数十メートルしかない短い道」で、どうやって鬼を見失うというのだろうか?

(その2へ続く)

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